マンションのエレベーターは築年数とともに部品が劣化し、トラブルや故障のリスクが高まります。設置から相当の年数が経ったら、リニューアルを検討すべきでしょう。このページでは、マンションのエレベーターリニューアルの事例をご紹介します。このほか、リニューアルのタイミングやコストについても解説します。
神奈川県川崎市にあるマンションのエレベーターリニューアル事例です。築29年で経年劣化が目立つエレベーターの制御系を中心にリニューアルしています。また、かごの内装も交換し、デザインが一新されています。
このリニューアルでは、エレベーターの安全性を高めつつ、利用者の利便性と快適性の向上を実現しています。天井照明をLEDにしたほか、デジタル階床表示や広角ミラーを導入。乗り場のインジケーターも大きなものへ変更し、視認性を高めています。
大阪府寝屋川市にあるマンションのエレベーターリニューアル事例です。6基のエレベーターを一度にリニューアルしています。工事にあたっては、事前に臨時総会を実施するなど、さまざまな配慮が行われています。
注目すべきポイントは、完全停止期間ゼロを実現していることです。こちらの事例では、エレベーターリニューアルは1基ごとに行い、主電源を落とすために夜間工事を実施しています。これにより、日中はエレベーターを止めることなくリニューアルを実現しました。
築30年のロープ式エレベーターをリニューアルした事例です。利用できる部品を流用した制御リニューアルで、制御盤や巻き上げ機、ドアコントローラーなどの電装一式を新しいものへ交換しています。
制御リニューアルと合わせ、エレベーターの安全性を高める工事も実施しています。地震や停電時にエレベーターが使えるように、停電時自動着床装置と地震時管制運転装置を追加。制御盤の転倒防止のため、ワイヤーで固定する対策も実施しています。
大阪府堺市にあるマンションリニューアル事例です。住民向けの説明会を実施したうえ、エレベーターリニューアルの賛否や希望などのアンケート結果を踏まえて工事が行われました。
注目すべきポイントは、高齢化を見据えてリニューアルした点です。エレベーターリニューアルに合わせ、車椅子仕様や視覚・聴覚障害者向け仕様のオプションを追加しています。この施策により、高齢の住民も安心感を持って使えるエレベーターが誕生しました。
マンションのエレベーターリニューアルのタイミングは複数あります。特に分かりやすいのは、長期修繕計画に合わせたリニューアルです。長期修繕計画は、一般的に25~30年スパンで計画されており、エレベーターの耐用年数とほぼ同じです。タイミングで迷った時は、長期修繕計画に合わせるとよいでしょう。
一方、メーカーの部品製造終了や、トラブル・不具合の増加をきっかけにリニューアルする手もあります。ただ、いずれも想定外のケースのため、日頃から資金を積み立てておくなど、不測の事態に備えておきましょう。
エレベーターリニューアルは、全撤去・準撤去・制御リニューアルの3種類に分けられます。
全撤去リニューアルは、全ての部品・機器を交換するリニューアル工事です。制御盤やかごはもちろん、三方枠や敷居も撤去します。準撤去リニューアルは、三方枠や敷居のみを流用し、それ以外は全て撤去する工事です。全撤去に比べて工期が短く、費用を抑えられます。制御リニューアルは、制御盤など制御系の部品・機器のみ交換する工事です。三方枠や敷居はもちろん、かごも既存のものを流用します。
エレベーターリニューアルのコストは、リニューアルの種類により異なります。なかでも安いのは制御リニューアルで、1基あたり数百万円台です。一方、高いのは全撤去リニューアルで、1基あたり1,500万円近くかかるケースもあります。準撤去リニューアルの場合、費用は1基あたり数百円~1,000万円前後です。いずれにせよ、かなりの費用がかかるため、計画的に資金を積み立てておく必要があります。
エレベーターリニューアルの工期は、全撤去・準撤去リニューアルで120日、制御リニューアルで90日が目安となります。エレベーターの停止期間は、全撤去が4週間~1ヶ月半、準撤去が半月~4週間ほどです。制御リニューアルのエレベーター停止期間は、数日~半月ほどを目安にしておきましょう。
エレベーターリニューアル中は、入居者に配慮した対応が求められます。移動手段が階段のみになるため、移動中に休憩できるように、踊り場へベンチや椅子を設置しておくとよいでしょう。また、荷物運びを手伝える体制を整えておくのもおすすめです。足腰が不自由な方がいる場合、座った状態で階段を昇り降りできる器具の購入・レンタルも検討してみましょう。
マンションのエレベーターは、計画的にリニューアルする必要があります。コストや工期を考慮し、適切なリニューアル方法を検討しましょう。
入居者への配慮も必要です。ポスターの提示や説明会を開催するなどして周知徹底し、不便を感じさせないように注意しましょう。